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かありいの昔⑮インドで人体実験  薬剤調合コースの日々

 3.薬剤調合コースの日々

2月から薬剤調合コースが始まった。
クラスメートはハルヤナ州出身のセラピスト歴10年のインド人男性。
英語イマイチだがくそまじめで勉強熱心な古き良き
インド人ジェントルマンという感じ。
先生はケララ出身の女医さん、29歳。
彼女の英語は彼よりいいのだが、
ーモーション状態で、これになれるのがまたある意味拷問だった。
明らかに自分と違うスピードで2時間話を聞くのはかなりつらい。
 
内容自体は基本中の基本なのでかなり簡単で、
薬の原料(動物、植物、ミネラル)の内訳とか、
薬の3つの作用(体内に必要な物質を増やす、不要物を減らす、健康維持・増強する)とか、
薬を飲む時間とタイミングの種類だとか、
薬の形状(固形、粉、液体、シロップ、アルコール性、その他など)、
薬を取り込む場所(肌、口、目、耳、鼻、肛門、尿道、膣など)
読んでみれば、「その通りだね」という基本的な内容と、
よく調合に使われる基本的なハーブ86種類の特性とサンスクリット語名と学術名を覚える。。。
というような基礎クラスが午前中で、
午後は実際に薬剤調合を病院の裏にある
レトロな薬剤調合小屋での調合実演と実習。
インドで何かを習うのは初めてなのでこれがインド式か?と思ったがどうなんだろう。
 
1. 先生はとにかく教科書を読む、話す。
質問があれば受けるし、なければそのまま先生が一人で教科書を読み続けるスタイルが続く。
 
2. インド人クラスメートは先生が教室に入ってくると立ち上がり、
先生が座るまで座らない。先生はこれに対して
「なぜ立ち上がるのか、座っててくれ」というが、彼は毎回これを行う。
途中からなぜか私もつられて立ち上がる。。。
 
3. 主な薬草86種類のサンスクリット名と学術名を暗記しろという。
それがテストに出るからと。が、しかにサンスクリット名は
マントラ(念仏)、学術名は恐竜の名前のようにしか私には聞こえない。
 
こんなもの86種類も30過ぎて覚えられないし、
そもそも私の学習動機がそこにないから益々覚える気にもならず。
インド人クラスメートはさすがインド人。毎回ほぼ暗記してきた。
 
4. 薬草の勉強は、名前の他に消化前と消火後の味や、
どのドーシャ(体内エネルギーのようなもの)に有効か、
熱い、冷たいのどちらの性質に属するのかなどの薬草の性質と、
われる薬剤の名前、とフォーム(粉、煮出し抽出、アルコール、固形、ペースト状など)を学ぶ。
先生は基本的に教科書に書いてあることを読むだけなので
メモ取る必要もないのだが、インド人は真面目に別途ノートをとっていた。
 
午後の授業は実際に病院で使う薬剤や油の調合を行っている小屋で、
調合係りのおじさんから教えてもらう。
かまどにまきをくべて何百年ものの古い金属製の重くて大きい鍋に
いつも何らかの薬草かオイルがぐつぐついっている。
映画で見る昔の魔女の調合室みたいだ。
薬草を煮出すにしても、オイルと混ぜるにしても、
数日煮続けなければいけないのでかなり手間がかかる。
伝統的なやり方のままで、全て手作業なので量産は出来ない。
薬草やオイル、バームなどは濃度によるが大体数か月から1年、
ものによってはそれ以上保存剤なしでも保存できるそうだ。
 
ある程度よく使われる薬剤はこの小屋に少しは作り置きがあるが、
それ以外は患者の症状に応じて処方されてから、
薬草を下請けの薬草屋に電話で注文し、
薬草屋は注文を受けてから代行の人に注文をだし、
彼らがジャングルに行って採取して数日後に病院に届けられる。
ここから乾燥、その他の作業を始めて何日もかけて薬を作る。
パンチャカルマの治療も時間がかかるが、
薬草を作るのにも時間がかかる。
こんなところにもインドの悠久の時間の概念が適応されているのね、と感慨深い。
 
そもそも、アーユルベータでは病気は間違った生活習慣の蓄積が
体内を回るドーシャ(エネルギーみたいなもの)のバランスを崩し、
アンバランスなドーシャが体内のどこかに滞留することにより、
そこに病気が生じ、そのまま放置すると病気が体の組織、
細胞を破壊するという考え方をする。
 
長い時間をかけて病気に至ったドーシャを体内から除去すれば病気は治る、
が除去するにも当然それなりの時間が必要となる。
つまり慢性病ほど治すのにも時間がかかる。
ドーシャを浄化しても、そのあと前と同じ生活習慣を続けたら、
又数年で同じドーシャが乱れて滞留し、病気となって表れるので、
浄化後は食生活その他全ての生活習慣を変えていくべきであり、
そのアドバイスを行うのもアーユルベータドクターの重要な仕事である。
 
因みに私はお試しコースを受けた後に、院長先生の脈診で、
あとバスティーを3回(すでに5回Sneha Vastiを受けていたので
正式には8回だが、続けてやるなら残りの3回だけでOK)受ける必要がある。
そうすれば君の腰痛は綺麗に取れると言われたが、
この時点ではもう浣腸にうんざりしていたし、正直浣腸で腰痛が治るかね?
と思っていたのでこれ以上の拷問はいいや、と思い「考えておきます」で終わらせた。
 
1月はまだあんまり外国人がいなくて先生(ドクター)も看護婦ものびのびやっていた。
1月途中でカルカッタからインド人女性がやってきた。
2月からのコースを受講するらしく、少し早目にやってきたので
ドライアイの治療を受けると言っていた。
 
20代後半から30代半ば位に見えるが、
話をしてみるともっと上かもしれないと思わせる、
落ち着いたエレガントな人だ。
とても綺麗な英語を話すが、カルカッタ生まれ、育ちだという。
ミッション系の学校に通ったので中、高から英語の授業だったらしいので、
そのせいもあるのか?離婚して今はIT系の会社でプロジェクトマネージャー
として働いているが、目が乾いて仕事がつらいので休みを取って
アーユルベータの勉強に来た、3月末には戻らないといけないけど、
この2か月で土日も夜も授業を入れて3か月分終えて帰るそうだ。
 
この彼女はなんというか、私のインド人女性のイメージ
「自我のないただひたすら男に従うだけの主婦」を打ち砕いだ。
自立して働いているし、離婚して30代で再婚をしていないで
実家にいるとのことだが、それはインド的にはかなり親族に色々言われてつらい立場なはずだ。
そして仕事を休んでまでこんなところに一人で勉強に来るなんて、
インドにも素敵な女性がいるものだ、と思っていた。
 
数日後に近くの果物屋さんで夕方顔を合わせ、
帰り道を一緒に歩きながら少し話をして、
週末に最寄りのダウンタウンカヌールまで買い物と
ノンべジ料理を食べに行こうと誘われる。
誰か一緒に行かない限り、めんどくささに負けて
1か月ずっとこの村から出ていなかったので、
ちょうどいいから一緒に行くことにした。
 
City Centreというカルカッタにもあるモールが
カヌールにもあるそうで、
その中のスーパーでオーガニックのお茶とか
そんなものを売っているらしいので、
姉さん(と便宜上呼ぶことに)はそこに行きたいという。
私も色々インドのハーブパウダーシャンプーとか
買いたかったので、ちょうどよかった。
 
めんどくさいのでオートリキシャーで行こうかというと、
行きはバスで簡単に行けるとここのマネージャーがいうから
そうしてみようというので、バス停に行くとすぐにバスが。
カヌールか?ときくとそうだというので乗り込む。
City Centreに行きたいとバス券売りの兄さんに伝えるとわかったというので、
これで着いたら教えてもらえるはず。
30分位で着くとみんなが言っているので、
外を注意しながら見ていると、30分位でCity Centreと
書いてあるピンク色の建物を発見。これがモール。。。
とは思ったがまあ仕方ない。姉さんと中に入ると3階建てで、
事実上2階までしか店舗が入っていない。
 
目指すスーパーでお目当てのものを購入。
姉さんは私以上に健康オタクらしく、
ハーブティーとかオーガニックギーとかを買いあさっている。
自分でお湯を沸かせるように湯沸しポットも買いたいと
同じ建物の中のしょぼい雑貨屋でそれも購入。
 
魚が食べたい姉さんとチキンが食べたい私が見つけた
唯一のノンべジレストランはこのショッピングモールの裏にあった。
ここでこれからほぼ毎週土曜日に同じものを食べて、
お互いの勉強報告と他のクラスメートたちについて情報交換をすることになる。
  
 インド人クラスメートと先生と私の3人の授業は
平和なペースでのろのろと進んだ。
だが、途中でどうやら彼はこの先生に恋しているんじゃないか?
という疑惑が生まれた。彼は北の方でセラピストをしていたらしいが、
おそらく客で会ったと思われる南アフリカ人に
故郷でパンチャカルマセンターを開きたいから来てくれと言われ、
既に数か月行ってきて、更に勉強が必要だということで
ケララに3か月勉強に来たらしい。
インドでもアーユルベータと言えばケララが本場、と思われていて、
セラピスト歴10年の彼も北とケララではやり方も使う薬草も随分違うと言っていた。
彼がいたおかげで、教科書を読むだけになりがちな授業に、
「北では同じ調合をしているか?これにはどの薬剤を使っているのか?」
とか情報交換が出来ておもしろかった。
で、彼曰く「北の方で使っているのは本場じゃないから、
適当な調合で皆同じような薬剤を使ったり、
オイルも使いまわししたりする。やっぱりケララはいい」だそうだ。
 
因みに私はそれでもびっくりしたが、ここでもオイルはその人だけにだが、
3回まで使いまわされる。例えば、オイルバス(全身に温めたオイルをかける)は、
かけたオイルをコットンで吸い取って、使いまわす。
3回まで同じ患者にのみ、使われる。
小麦粉を練って中に温めたオイルを流し込む治療も、
これをコットンで吸い取って3回(3日分)まで同じ人に使いまわす。
北では、違う人にも使いまわしていると聞いて、ぞっとする。
汚いじゃないか。。。これはその施設とか、
価格設定によっても違うんじゃないかと思うけど、どうなんだろう?
 
そして途中から彼はこの先生に南アフリカに来てくれないかというようになった。
彼がここで勉強しても医者の仕事は出来ない。
そして、パンチャカルマセンターには医者が必要だ。
彼を南アフリカに呼んだパートナーも、先生も見つけてきてくれと言っているらしい。
 
が、先生は「ここの院長先生に首にされたら考えるわね」と取り合わない。
そして彼女がいないときには、「彼女は本当にとってもいい先生だ」
と笑顔で私に訴える。
実習中にケララのカレーと北のカレーの違いの話になり、
そこからベジかノンべジかの話題になり、先生がノンべジだというと、
ベジの彼は、「もし結婚した相手がベジだったらどうしますか?」と聞いた。
先生は「私は結婚していない。それでこの話題は終わりだ」と。。
この時怪しかった。おそらく、この30歳推定童貞のジェントルマンは、
先生に恋しているんじゃなかろうかと。。。
 
更に授業中に私は彼の横に座っているので見えないのだが、
この人はにやにや笑っていることが多いらしいのだ。
そして先生が突然、「何かおかしいことでも?私何かおかしなこと言ったかしら?」
と聞いても彼は「いえ、なんでもありません」とニヤニヤし続ける。
前のやり取りから怪しいものを感じ取っていた私は、心の中で
「先生、おそらく彼は先生をみてうれしくて二ヤツイているんじゃないかと思うけど、
それいくら問い詰めても彼も言えないだろうよ」と思ったが、
先生は本気で眉間にしわを寄せて「そんな風にニヤニヤされると、
私が何か間違ったことを言っているかと思うじゃない」とあきらめない。
すーっと存在感を消して、私はいない人になることにした。
 
2か月目は1週間とか2週間だけ勉強に来ている日本人や、
フランス人、イギリス人などもいて、皆自国でヒーラー的な仕事をしているか、
その類の気質の人が多いことに気が付いた。
私はタロットとレイキを趣味でここ数年やっている。
一人の日本人は整体師且つヨガの先生を教える先生。
フランス人は仕事は行政サービスか何からしいけど、
マッサージに興味があって、これからタイにもマッサージの勉強に行くそうだ。
イギリス人のおばさんは、昔香港の仏教寺で学んだという
電気針(針は刺さないタイプらしい)とチャンネルクリーニング
をやるヒーラーだそうだ。ガン末期患者の痛みを和らげるような仕事が多いので、
自分が疲れ果て、自身のデトックスの為にここに来たそうだ。
とっても優しそうで感じのいいおばさんだが、
確かにグレーのおもーいオーラをまとい、疲れ果てた表情をしていた。
 
が、治療を始めて数日すると、彼女のオーラが明るく元気になってきた。
表情も生き生きしてきた。ある日彼女が自分も実行したという
「リバーフラッシュ」なる、肝臓を綺麗にする方法を院長先生に教えていた。
ここの入院患者の一人が酷い脂肪肝でそれをやった方がいいんじゃないかと思い、
進めたそうだ。後ほどインド人の姉さんとこの話になった時にググったら、
アメリカとか日本では結構知っている人は知っている、
エプソムソルトとレモンとオリーブオイルだけで出来る肝臓デトックス法だった。
彼女は香港の仏教寺のお坊さんから教えてもらったらしい。
 
そのやり方を彼女に聞いた時に、
「ヒーラーって自分がどうしても患者さんの悪いエネルギーを
吸い取って疲れちゃうみたいだね」というと、
「そうなのよ、こればっかりはどうしようもないの。
だけど人助けをしなくちゃ。私たちはその為に生きているんだから。
皆全員繋がっているのに、そのことを忘れちゃっているだけなのよ。
皆同じなのよ」とどこかの宗教の勧誘のような言葉が突然発せられた。
 
はあ?と思っていると、「旦那のところに戻らなきゃ」と部屋に戻っていった。
なんだったのだ、あれは?
2人の日本人のうち、整体師の方も、もう一人の方も、
料理師でもあることがわかり、院長先生に「日本食作ってくれ」といわれ、
整体師の方の彼が作ることになり、私たち外国人もおすそわけをもらった。
 
それがきっかけで2人とも話をするようになった。
これもいい出会いで、一人は20年オーストラリアでシェフとして仕事をしていて、
5年のツーリストビザ(オーストラリアではそんなものがあるらしい)をとり、
お金が無くなるまでインドを旅行しようかなという方で、
ちょうど1年弱たったらしい。
去年の夏はカシミールのラダックのホテルで現地スタッフと混ざり、
同じ給料でウエイターをしたりしながら旅を続けているらしい。
お金がないわけではないので、ここに来る前は1日100ドルくらいの
リゾートタイプアーユルベータスパでトリートメントを受けていたそうだ。
そこではやはりセラピストの質も、施設の清潔度も随分差があるとのこと。
まあ、ここは病院兼学校なのでこれはこれでいいのでは、とのこと。
 
彼はここでマッサージを学び、
将来的にはセラピストも悪くないなと考えているそうだ。
もう一人は日本でヨガの先生の先生をしたり、創作料理を作ったり、
週末は整体師として働いたりと色々手がけている人だ。
私より若いかと思ったら、同い年位だった。
この人と「技術交換」なるものをしようと、
私の腰痛を彼がマッサージしてくれて、
私はタロットとレイキでお返しすることになった。
 
びっくりしたことに、1時間もんでもらっただけで、腰痛が消えた。。。
1年半ずーっとしつこく消えなかったあれが、なくなった。
ということは、これはヘルニアとか血行不良とか呪い?ではなく、
単なる骨格のずれだったということか?ときくと、
「多少ヘルニアはあるにしても、主に骨格のずれ。
随分ずれてたし、そのせいで固くなってた筋肉も揉み解したし、
ずれも治した」。すごすぎる、日本の技術!
 
この腰痛のせいで、1年半前から、シンガポールで麻酔注射を打ち、
理学療法も受け、中国系クリニックで針を打ち、漢方薬を飲み、
それでも治らなくて古巣成都の盲人マッサージまで
数日連続マッサージを受けに行き、
タイでもマッサージをして、と痛みのために各国渡り歩いても
軽減はしても治らなかった痛みが消えた。。。
 
もちろん、ヘルニアが多少出ているから、
まだちゃんと前屈は出来ない。でも痛みが消えた。。。
すごいじゃないか。と思ったが、これは又骨盤がゆがむような日々の習慣のせいで、
日数がたつともとに戻ってしまうことも多いそうで、
実際にそうなってしまった。4日間は痛みがなかったので、
いい気になってヨガで思いっきりひねったのがいけなかったのか、
またもとに戻ってしまったのだ。。。
 

アーユルベータ正しい。

「痛みとは病気であり、病気とは正しくない生活習慣から発生するものである。

よって、病気を治すにはその正しくない生活習慣を変えることが重要である」。

因みに、アーユルベータでは、怒りも病気と考える。

心が平和で幸福な状態に保たれていれば、怒りは生じないのだ。

 
それを2か月目に目の当たりにして実感した。(詳細は後ほど)
1週間でも2週間でも1か月でも、
そのコースを修了すると試験を受けさせられ、
終了証明が渡させる。自国でセラピストをしている人は、
きっとこれが「本場ケララでアーユルベータを学んできた」という宣伝になるのだろう。
が、やっぱり思った通りテスト受けろと言われても、
質問が10個くらいあってそこに自分で自由形式で答えを作文するタイプなので、
適当に4択で選んでなんとか埋められるという類のテストではない。
よって、こんなもの全部覚える気のある生徒はあんまりいない
(インド人は比較的真面目にやってたが)。
なので日本人やその他の外国人が一人テスト部屋に入れられ、
教科書を見ながら完璧な答案を作成している姿を目撃し、
「それでいいの?」ときくと「全然余裕」との答えだったので、
私もこれで完全に試験の為の暗記を放棄した。
 
お試しパンチャカルマも体験したことだし、
今度は薬を飲んでみようと、私の症状に合った薬を処方してもらう。
中国の漢方に近い、あの煎じ薬、シロップ、錠剤、カプセルなど、
食前と食後に飲むものがたくさんでた。
唯一の救いは3食後じゃなくて、
朝と夜というタイプが多いので、1日2回で済むことか。
とにかく煎じ薬はまずい。おまけに15MLに対して
お湯45MLで割って飲むよう指示があり、
看護婦が朝晩薬の時間に部屋にやってくるので自分で勝手に飲めない。
そして看護婦というのは自分のスケジュールで動いたり、
途中で何か他のことを頼まれて忘れたり。。。ということがあるので、
特に夕方は自分で出向いてお湯をもらって飲むことにした。
このように図々しく臨機応変に対応すれば不平も出ないが、
アジアに慣れていない外人は「看護婦が来なかった」
とか「彼女らは言ったことを覚えてない」とか「
ちゃんと仕事をしていない」とかドクターにクレームをつけることになる。
 
つけたところで、ドクターが看護婦らを注意することはない。
なぜなら、彼女らの殆どは英語が殆ど話せないので、
そもそも外人が頼んだことを理解していない可能性の方が強い。
相手の表情を見ればわかりそうなものだが、
これが欧米系にはそうはいかないらしく、
彼らが増えると途端にクレームが増え、
その処理で益々仕事効率が下がるという悪循環に陥る。
 
1月はまだハイシーズンの一歩手前だったので、
それなりに経済的に余裕のある年齢層が何となくコースを取ってみるとか、
時間に余裕をもって治療を受けに来たりという人が多かったので
比較的いい雰囲気が館内に漂っていた。
 
とは言ってもここはインドなので、やはり普通にやってなぜこうなるか
というような間違いは大抵起こる。薬がそのいい例で、
大抵聞いていた処方通りに出てこなかったり、
1週間分の薬が3種類あるとしたら、
そのうちの1つは多すぎるか少なすぎるとかそういった具合だ。
 
特に一つづつ自分で袋にバラ入れしている、
一番調整しやすいはずの薬でそういった間違いがよく起る。
そのたびにドクターは患者から色々質問され、
全てがダブルワークになるという悪循環。
 
お湯と電気も24時間供給ということになっていても、
政府の仕事で電線が途中切断されている日とか、
Wifi接続も政府の問題、モデムの問題、
その他色々で数日接続が途切れることもよくある。
 
5分ごとにブチブチ切れることもよくある。
電気はさすがに夜暗くなると来るし、
昼間も停電が長引くと電動でフィルターしている飲料水がなくなるので、
定期的にジェネレーターを入れて水が精製されたら又しばらく止めるとかやっていた。
ケララはインドの中では識字率が一番高く、貧困も少ない豊かな州だけど、
田舎はまだこんなものらしい。
 
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