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神無月〜霜月(14)

神無月~霜月(1)

神無月~霜月(2)

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神無月~霜月(10)

神無月~霜月(11)

神無月~霜月(12)

神無月〜霜月(13)

 

の続き。

 

 

 

手術が終わってから一週間が過ぎた。

 
母は次第に回復を見せた。
 
回復していくに従って、
 
いろいろなことが気になりだしたらしい。
 
 
町内会のこと、
 
茶道関連の組織のこと
 
福祉協議会のこと、
 
祖父の49日法要のこと・・・
 
 
10月に祖父が亡くなってから、
 
母は多様な手続きに追われていた。
 
もともと世話しなく動きまわる性分である母の口癖は、
 
 
「夜12時まで動かないと一日がもったいない」
 
 
であった。
 
 
その台詞どおり、昼はあちこちの所用や
 
茶道のレッスンをこなし、
 
夜は祖父宅に立ち寄り、できるだけ家族での食事を取るようにしていた。
 
それが母には丁度よい忙しさだったのだろう。
 
そこに祖父という歯車が欠けたことで、
 
母の忙しさは2倍近いものになった。
 
 
母が使っていた祖母宅の机には、
 
プリンターにセットされた喪中ハガキが
 
そのままになっていた。
 
車には、町内会の書類がバッグ一杯に詰まっていた。
 
今や茶室と化した仏間は、
 
炉開きの準備の中途になっていた。
 
茶道具の店からは注文確認の電話が母の携帯に入ってきた。
 
 
一体なにがどうなっているのやら、
 
僕には全くわからなかった。
 
ベッドの脇で母の指示を仰ぎながら、
 
母がやりかけていた各手続きを淡々と進めていく日々が続いていた。
 
 
その日、僕は頼まれていたニットのカーディガンとニットキャップを
 
病院からほど近くにある衣料店、ユニクロで購入し母に届けた。
 
母はこのところ病院食の味付けの悪さを毎日ぼやいていた。
 
あまりに言うので、最初は味覚障害ではと疑ったが、
 
件の “ 自家製の梅干し ” はとろけるほどの美味さらしいので問題ないようである。
 
母は毎日ほとんど梅干しと白米のみを食し、
 
この梅干しがないと、ご飯がのどを通らないらしい。
 
母はこの梅干しをもはや信仰していた。
 
梅干しによって生かされていると信じていた。
 
梅干しが入った瓶のフタに貼付けてある白テープには
 
今や母の名前ではなく【梅干し様】の文字が光っていた。
 
完全に母の信用を勝ち得た梅干しは、
 
もはや単なる梅干しから【梅干し様】へと昇格したのである。
 
 
帰り際、母は明日の面会時に持ってきて欲しいものとして、
 
新聞に記載してある一週間分の“お悔やみ欄”の切り抜きを所望した。
 
 
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【 お知らせ 】


長い間休止しておりました、

ほしよみ堂およびかぎねこ亭での

対面鑑定とレッスンを

本日2月2日より、再開しております。


ご予約、お問い合わせは

渋谷ほしよみ堂 までお願いいたします。 

 

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